14歳の私に

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C・ブコウスキー 「くそったれ!少年時代」

中学生のとき、ザ・ブルーハーツ時代のマーシーが書いた文章の中に、チャールズ・ブコウスキーという名前を見つけた。
妙に印象に残った。よし、読んでみよう。
その頃の私にとって近所で1番かっこ良かった本屋へ出かけ、いくつかあるタイトルの中から『くそったれ!少年時代』を選んだ。
衝撃だった。これまでに読んだことのない小説。
全く入り込めず、とにかく痛くて苦しい。
良い出来事なんてひとつも起きずに、人生は着々と悪化する。
同年代の男の子の心情がこんな風なのかと思うと、
不憫であると同時にとても恐ろしかった。
今考えれば、ブコウスキー少年のような男の子は、90年代の日本にそう居るもんじゃないと思う。
第一、クラスメイトの両親のうち大半が失業中だという状況もなかった。
それから数年後、ブコウスキーが書いた他の文章、とくに詩集は何度も読み返す本になったけれど、本書だけは最初のトラウマが忘れられず、長らく本棚の隅で所在なさげにしていた。
それが最近になって急に気になりだし、17年振りに読み返した。
14歳の私が恐れていた少年は、情け深い男だった。
それに、恐ろしいのはハンク少年ではなく大人たちである。あれほどの悪環境の中にあって、よくこんな優しさのある人間が育ったものだと思ってしまった。基本的には最低なのだが…。
寂しくて、最悪な事しか起きないと思っていたハンク少年の日常にも、ごく稀に煌めいた瞬間があった。
あの時、見て見ぬふりをしていた少年と何かが通い合えた数頁、ただただ愛しかった。
この自伝のすべてを、まるで自分自身の物語のように思える人をどこか羨ましく思う。

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