儚く、幸福な映画

atranta『アタラント号』
1934年 フランス映画 監督:ジャン・ヴィゴ

29歳で逝去したジャン・ヴィゴが遺した、たった一つの長編劇映画。
ミシェル・シモンが見せてくれるこの世の宝物。愛を交わし合う恋人達。
すべてのシーンが幸福な涙で漂うように美しく、胸をしめつけられます。
懐かしさの中に哀感を携えたモーリス・ジョベールによる音楽もまた、アタラント号をより忘れがたい作品にしています。

『プレイタイム』
1967年 フランス映画 監督:ジャック・タチ

ジャック・タチが指揮者となって、膨大な費用と労力をかけ作られたビルや都市は、まるで巨大な生き物のような魅力を放っています。
タチはその世界の観察者となり、人々の生活の中にある、目を耳をこらさなければ感じられない小さなユーモアや喜びを、飄々と丁寧に掬い上げてくれます。
彼らの一挙一動、取り巻く世界の光と影と音、一つ一つが束の間である幸福な時間の集積となって、 きらきらと輝き続けているようです。

『有りがたうさん』
1936年 日本映画 監督:清水宏

人々から“ありがとうさん”と呼ばれる運転手の乗り合いバス。東京への道中に居合わせた乗客達の、苦く切ない人生が優しい眼差しで描かれる、ロードムービーの原点、 ヌーヴェルヴァーグの先駆けと評される作品。
出発するバスから見える山々、広い空と穏やかに流れる雲、水面をゆく鳥の群れ、運転手に思いを寄せる女たちの眩しさは、まるで夢のように美しく忘れられません。

『お早よう』
1959年 日本映画 監督:小津安二郎

念入りに計算された美しい色彩と、小津安二郎特有の会話のテンポに幸福感と可笑しさが満ちたホームコメディ。
子供たちと大人の世界を通し、生活に溢れている一見して煩わしく、無駄に思えるような人と人との関わり合いが、大きな包容力を持って、ユーモラスに親しみ深く映し出されています。

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