思ひ出 2014

image (1)

2014年がもうすぐ終わる。今年は個展も出来た。出会いもあれば、今でも信じ難い別れもあった。ベルギー旅行に行けたことは何よりも良かった。数日振りに友人に会うと、もうひとつの家族に再会したようだった。
好きな絵や言葉や、嫌なことについて自然にいつまでも話せる相手がいるのは、嬉しいことだ。

本◆普段短編ばかりだが、今年は女性作家のエッセイをよく読んだ。けれどやはり、改めて武田百合子さんの文章が好きだ。堀内誠一氏の著書に「見て世界を知るものは王者なり」という言葉がある。まさしくそれは堀内誠一その人のこと。武田百合子もまた世界を眼で見た類い稀なる観察者の一人である。それを知識でなく、感覚と体験と心ありきの、誰にも真似できない言葉で私達に伝えてくれる。

音楽◆昨年に引き続き、サム・リーのライヴを見ることができた。最初は容姿が、ジョナサン・リッチマンにそっくりなことにまず感動してしまったが、たった一年経ったのちに見たサム・リーは、もうサム・リーという一人の特別な表現者になっていた。イギリスの伝統音楽を現代に伝えながらも、いかにもフォークといった楽器は使いたくないんだ。という姿勢がとても好きだ。

映画◆オーストリアからウルリヒ・ザイドル。フランスからギヨーム・ブラックと、素晴らしき映画監督を知った。
そして、生アレハンドロ・ホドロフスキーにも会うことが出来た。
個人的に心に残っている映画はコーエン兄弟の、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』スターでもない、後に再評価されるわけでもない、どん底にいる天才でもない、中途半端な一人の男の堂々巡りかに見える一週間。時代的にも、大きな動きの過ぎた後と、新しいものが生まれる隙間の、誰も描いてこなかった時代の音楽シーンの話。
始まった途端そこにある人と空気や時間の流れが、自分に入り込んでくる。そんな心地良さに涙が滲む。そしてラストシーンでひたすらにその心地良さがループする。だから映画を思い出している時間もまた良い。
原案の「グリニッチ・ヴィレッジにフォークが響いていた頃-デイヴ・ヴァン・ロンク回想録-」と「ボブ・ディラン自伝」を読むと、さらにこの映画を愛しく思う。
あとになって色んな人と話してみると、時代に対しては体験した、してないに関係なく人それぞれの思い入れがあったりして面白い。
来年頭にはやっと、『ブラインド・ジョー・デスを探して-ジョン・フェイヒ―の物語-』が公開される。
内容がどうなっているか分からないけれど、ジョン・フェイヒ―のドキュメンタリーが作られたということ自体が嬉しい。

それでは2014年、良き年の瀬をお過ごしください!

カテゴリー: diary   パーマリンク

コメントは受け付けていません。